SDVのレベルと自社の現在地の測り方

「自社のSDV化はどこまで進んでいるのか」を測りたい、という問いはよく聞かれる。ただし先に結論を言えば、SDVには自動運転のSAEレベルのような公式の標準レベルは(現時点で)確立していない。各社・各団体が独自の段階モデルを示しているが、唯一の業界標準と呼べるものはない。本記事は、「レベル何」と一言で言う代わりに、自社の進み具合を複数の観点で自己評価する枠組みを示す。

なぜ「SDVレベル」は一概に言えないのか

理由は二つある。第一に、SDVは単一の技術ではなく、車載コンピュータの構成・更新の仕組み・ソフトの開発体制など複数の要素の組み合わせであり、一本の数直線では測りにくい。第二に、明確な国際標準が定まっておらず、コンサルティング会社やメーカー・団体がそれぞれ独自の段階モデルを公表している状態である。したがって、特定の段階モデルを業界標準であるかのように扱うのは正確でない。本記事も特定のレベル定義を標準として採用しない。

自社を測る観点

公式レベルがない代わりに、自社の現在地は次のような観点で捉えられる。いずれも「初期段階 → 進んだ段階」の傾向を示すもので、公式のレベルではなく自己評価の視点である。

観点初期段階の傾向進んだ段階の傾向
E/Eアーキの集約度機能ごとに多数のECUが分散少数の高性能コンピュータへ集約
OTAの実装範囲地図・インフォ等の一部のみ走行制御を含む広い範囲
ソフトの内製度サプライヤ任せが中心中核を自社で開発・管理
継続更新の仕組み出荷で開発が完了出荷後も更新し続ける体制

たとえばセントラルコンピュータゾーンアーキテクチャへの集約が進み、OTAアップデートの対象が走行制御にまで及び、ソフトを自社で継続開発できているほど、ソフトウェア・デファインドな車に近づいていると見なせる。

どの観点を優先するかは事業次第

これらの観点は、すべてを一律に満たすべきものではない。自社の製品や事業戦略によって、どの観点を優先するかは変わる。たとえば更新による継続的な価値提供を重視するなら継続更新の仕組みと内製度が、コスト構造の改善を重視するならアーキテクチャの集約度が、より重要な指標になる。大切なのは、単一の「レベル」で自社を順位づけることではなく、複数の観点で現在地と次の一歩を具体的に把握することである。

観点を使うときの注意

他社や調査会社が示す段階モデルは参考になるが、それを唯一の正解として鵜呑みにしないことが重要である。モデルはあくまで整理の枠組みであり、自社の事業目標に照らして読み替える必要がある。「レベルを上げること」自体が目的化すると、事業価値につながらない投資を招きかねない。

まとめ:レベルでなく観点で現在地を掴む

SDVに公式の標準レベルはないが、アーキテクチャの集約度・OTAの範囲・内製度・継続更新の仕組みといった観点で、自社の現在地は十分に捉えられる。具体化する際は、全体像を 【SDV入門】経営層が掴むSDVの全体像 で押さえ、進める体制は SDV推進の組織体制と移行シナリオ を、投資の考え方は SDV関連予算の立て方・ROIの測り方 をあわせて参照してほしい。