RXSWIN
RXSWIN(RX Software Identification Number)とは、UN-R156が定義する、型式認証に関わるソフトウェアの情報を表すためにメーカーが定める専用の識別子であり、規則ごとに認証関連ソフトの構成を識別し当局が追跡できるようにするものである。
要点(Key Takeaways)
- UN-R156 §2.2で定義される識別子。名称の「X」は個々のUN規則の番号を指し、規則単位で型式認証関連ソフトウェアを識別する
- 認証関連ソフトの変更がその規則に影響する場合に番号を上げる(インクリメントする)。1つのソフトが複数の規則に紐づくこともあり、影響する規則の番号だけが上がる
- 初期シリーズの§7.2.1.2は「RXSWINを使う車両型式」にだけ要件をかける条件文だった。2026年6月4日発効の01シリーズでは、登録済み車両へのソフト更新は、評価した各規則の認可すべてにRXSWINが割り当てられていなければ実行できない(§7.1.4)
- 車両から読み取ったRXSWINを型式認証証の記載と照合すれば、認可当局はメーカーを経由せずに使用過程車の法規適合を確認できる
- SUMSは、更新前後のRXSWIN情報へのアクセス・更新と、実車のソフトバージョンとRXSWINの整合確認のプロセスを備えなければならない(初期シリーズ§7.1.1.3・§7.1.1.4。01シリーズでは§7.1.1.4・§7.1.1.5に繰り下げ)
詳細解説
RXSWINは、UN-R156 §2.2 において「車両のRegulation No X に関わる型式認証関連特性に寄与する電子制御システムの、型式認証に関わるソフトウェアについての情報を表す、車両メーカーが定義する専用の識別子」と定義される。名称の「X」は個々のUN規則の番号を表すプレースホルダーであり、RXSWINは規則単位——「この規則の認証に関わるソフトはいまどの構成か」——でソフトウェアを識別する。個々のECUのバージョン番号そのものではなく、認証との対応関係を束ねる上位の識別子である点が本質といえる。
番号の上げ方は規則ごとに独立している。交通安全環境研究所の解説(2026年10月)が示す例では、あるソフトがUN-R157(ALKS)とUN-R79(ステアリング装置)の両方に紐づく場合、両規則に影響する変更なら R157 と R79 の番号がともに上がり、R79 だけに影響する変更なら R79 の番号だけが上がって R157 の番号は据え置かれる。したがって、使用過程車のRXSWINが登録時の値から変わっていれば、その規則に影響するソフト変更が行われたことが分かる。
運用要件として、UN-R156 §7.2.1.2.1は、各RXSWINが一意に識別可能であること、型式認証関連ソフトウェアの変更が型式認証の拡張または新規取得につながる場合にRXSWINを更新することを定める。各RXSWINは少なくとも標準インターフェース(OBDポート)経由で読み取り可能でなければならず、車両側に保持しない場合はメーカーが認可当局へソフトバージョンと型式認証の対応を申告する(§7.2.1.2.2)。さらに SUMS の認可要件として、更新前後のRXSWIN情報にアクセス・更新できるプロセスと、実車のソフトバージョンがRXSWINの定義と整合していることを検証できるプロセスの保持が求められる(初期シリーズ§7.1.1.3・§7.1.1.4)。
UN-R156の初期シリーズでは、RXSWINの要件は「RXSWINを使う車両型式」にだけかかる条件付きのものだった(§7.2.1.2)。 2026年6月4日に発効した01シリーズ改正(ECE/TRANS/WP.29/2025/142、2025年11月のWP.29第197回会合で審議)は、この条件文を「Requirements for RXSWIN」という見出しに改め、二つの条項を新設した。一つは、規則ごとに専用のRXSWINを割り当てるプロセスをSUMSに求める§7.1.1.3。もう一つは、01シリーズで認可された登録済みの車両に対し、更新の影響を評価した各規則の認可すべてにRXSWINが割り当てられていない限りソフト更新を実行してはならないとする§7.1.4である。交通安全環境研究所の解説(2026年10月)は、この変化を「義務化」と整理している。
経過規定(§13)により、締約国は2028年9月1日以降に初めて発行された初期シリーズの認可を、2030年9月1日以降は初期シリーズの認可全般を、受け入れる義務がなくなる。ただし、01シリーズの変更の影響を受けない車両の認可は引き続き受け入れられ、既存認可の拡大も続けられる(§13.5・§13.6)。
SDVにおける位置づけ
RXSWINは「OTA ↔ 型式認証」をつなぐ追跡キーである。OTAアップデートで配信されるソフトウェア変更のうち、型式認証の特性に影響するものは、RXSWINの更新を通じて当局から見える形で管理される。EUでは型式認証特性に影響する更新を行う車両にUN-R156適合が要求されている(Delegated Regulation (EU) 2022/2236 第2条、2026年6月時点)。
義務化の意味は、当局がメーカーを経由せずに市場の車両を確かめられるようになる点にある。認可当局は型式認証証に記載したRXSWIN(例:R157-001、拡大認可後のR157-002)と、市場の車両から読み取った値を照合すれば、その車両のソフト構成が認可済みかを判定できる。日本では、使用過程車へのソフト更新で基準適合性に影響する変更を「特定改造」として2020年に許可制にしており、当局は更新前に内容を把握できる。事前申請の仕組みがないEUでは、この照合が市場の適合確認に必須の手段になる。
運用面の課題も残る。車外でRXSWINを保持する場合、その情報にアクセスできるのはSUMSの認可当局に限られ、別の仕向け国の当局が参照する仕組みは未整備である。この点と、使用過程車の拡大認可の番号体系は、2026年10月時点でWP.29 GRVA傘下のCS/OTA非公式作業部会で議論が続いている。SDVの実務では、OTA配信の一つひとつについて「どの規則に影響するか/どのRXSWINを上げるか」を判定する仕組みが、開発スピードと規制適合を両立させる要所になる。
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カテゴリ: 規制・型式認証
出典・一次情報
- UN Regulation No. 156 — Uniform provisions concerning the approval of vehicles with regards to software update and software updates management system (§2.2(RXSWIN定義)・§7.1.1.3/§7.1.1.4(SUMSにおけるRXSWIN管理プロセス)・§7.2.1.2.1(一意性と更新条件)・§7.2.1.2.2(読み出し・申告)) — 発効 2021-01-22(EUR-Lex原文で照合済・2026-06-06)。§7.2.1.2の書き出し「Where a vehicle type uses RXSWIN:」を原文で照合済・2026-10-17(docs/primary-sources/unece-r156)
- 榎本恵・新国哲也(自動車技術総合機構 交通安全環境研究所)「UN-R.156-01改正におけるRXSWIN要件の解説」自動車技術会 2026年秋季大会 学術講演会 講演予稿集 (文献番号 20266219(講演No.219)— 初期シリーズで任意・01シリーズで義務化、規則横断の増分例、当局による照合、運用課題) — 講演 2026-10-15・予稿で照合済・2026-10-17
- Council of the European Union, ST 13719 2025 INIT(WP.29 第197回会合に向けたEU立場の決定案) (UN-R156の改正案(RXSWINの使用要件を導入)が2025年11月11〜14日の第197回会合の審議対象) — 照合済・2026-10-17
- Depositary Notification C.N.237.2026.TREATIES-XI.B.16.156(UN Regulation No. 156 の改正の採択) (ECE/TRANS/WP.29/2025/142 の改正案(2025-12-04回付)が2026-06-04から締約国を拘束する) — 通知 2026-06-12・原文で照合済・2026-10-17
- ECE/TRANS/WP.29/2025/142 — Proposal for a new 01 series of amendments to UN Regulation No. 156 (§7.1.1.3新設(RXSWIN割り当てのプロセス)・§7.1.4新設(登録済み車両の更新の前提)・§7.2.1.2(見出しを「Requirements for RXSWIN:」に改正)・§13(経過規定)) — 文書 2025-08-28・原文で照合済・2026-10-17(docs/primary-sources/unece-r156)。採択時の修正(会合報告 ECE/TRANS/WP.29/1188 第78段落(c)、AC.1 投票 41/0/0)は通知書と附属書4の文言のみで、上記条項に変更なし(照合済・2026-10-17)
- Commission Delegated Regulation (EU) 2022/2236 (Art. 2(経過規定)— 型式認証特性に影響する更新を行う車両へのUN-R156適合要求) — CELEX 32022R2236 原文で照合済・2026-06-05