遠隔型自動運転(レベル4)とは — 遠隔監視の1:N体制と制度

運転者のいないレベル4の自動運転サービスでは、「1人の遠隔監視者が何台を見られるか」が事業の採算を左右する。結論を先に言えば、日本の制度はこの台数を法令で決めていない。台数は事業者が出す計画ごとに審査される。そして2026年の研究は、上限を決めるのは台数そのものではなく、どの業務を遠隔の人に任せるかだと示している。本記事は、制度が定めること・定めていないこと、国内初の許可事例、研究の知見を整理する。

遠隔型自動運転とは何か

遠隔型自動運転とは、車内に運転者がいない状態で自動運転システムが走行し、離れた場所の人が監視や対応を受け持つ運行形態である。航空の管制にたとえると分かりやすい。操縦は機体(自動運転システム)が行い、管制官(遠隔監視者)は複数の機体を見ながら、異常や判断が要る場面で手を貸す。管制官1人が受け持てる機数が、交通量ではなく「1機あたりどれだけ手がかかるか」で決まるのと同じ構図である。

遠隔の人が担う役割は、大きく3つに分けて考えると整理しやすい。

役割内容人の関与の重さ
遠隔監視車両と周囲の状況を見守り、異常時に運行を止める軽い(異常時のみ対応)
遠隔支援ドアの開閉確認や発車の可否など、判断だけを返す中くらい(定常的に発生)
遠隔操縦遠隔から操舵や加減速を直接行う重い(1台に専念)

日本の制度——許可制で、台数の上限は定めていない

日本では、改正道路交通法(令和4年法律第32号)により、2023年4月1日から「特定自動運行」の許可制度が始まった。特定自動運行は、レベル4相当の自動運行装置を使い、運転者がいない状態で行う運行を指す。

警察庁の解釈通達(令和5年3月24日、丁交企発第55号)によれば、制度の骨格は次のとおりである。

日本の道路交通法と警察庁の解釈通達には、遠隔監視者1人あたりの台数の上限を定めた規定はない。 法令が定めるのは主任者の役割と遠隔監視装置の要件であり、何台を受け持つかは、事業者が作る特定自動運行計画のなかで示し、公安委員会の審査を受ける形になっている。

国内初の事例——永平寺町の「1人で3台」

制度の運用例として最初に示されたのが、福井県永平寺町の事例である。国土交通省は2023年3月30日、産業技術総合研究所が申請した車両を、運転者を必要としないレベル4の自動運行装置として認可した。車両はヤマハ製の電動カートを改造したもので、「永平寺参ロード」のうち約2kmの区間を、道路に敷いた電磁誘導線に沿って時速12kmで走る。この速度と経路が、その車両の運行設計領域(ODD)にあたる。

続いて2023年5月11日、地元の事業者が福井県公安委員会に申請していた特定自動運行が、国内で初めて許可された。産総研の発表によれば、特定自動運行主任者が3台を運行する予定で、常時の遠隔監視は不要とされ、主任者は車両が不具合などで自動停止した後の対応にあたる。

ここで押さえたいのは、この「3台」は制度上の上限ではなく、低速で専用の経路という条件のもとで認められた運用の一例だという点である。業務の範囲が「停止後の対応」に絞られていたからこそ成り立った台数とも言える。

なお、海外には台数の比率を明文で定めた例もある。中国交通運輸部の「自動運転汽車運輸安全服務指南(試行)」(2023年12月公開)は、完全自動運転のタクシーを指定区域で運行する場合に遠隔安全員を使えるとし、その人車比を「1:3を下回らない」と定めている。これは安全側の下限比であり、人の能力の上限を示した数値ではない。

研究が示した「台数を決めるのは業務の切り分け」

2026年10月の自動車技術会で、産業技術総合研究所は、北海道上士幌町の自動運転バスを模した遠隔監視シミュレータで、1:N体制を定量的に検討した結果を報告した(文献番号20266282)。遠隔の人が担う定常業務として、ドア閉めの確認と判断、発車前の安全確認、停留所での通過・停車の判断の3つを取り上げている。

実験では、地域の実証に関わる10人が2〜5台を同時に受け持った。ドア閉めの判断は96.0〜98.6%、発車前の安全確認は98.8%以上の正答率を保った。一方、停留所を通過してよいかの判断は、完了率が53.0〜71.1%にとどまり、1回あたり平均10.6〜18.0秒かかった。ドア閉めの判断(6.0〜7.2秒)や安全確認(3.2〜4.2秒)よりも明らかに重い。

この処理時間をもとに1〜30台の運行をシミュレーションし、監視者の稼働率60%を実用上の目安として比べると、結果は運用の設計で大きく分かれた。

運用遠隔の人が担う業務稼働率60%に達する台数の目安
全停留所に停車する運用ドア閉めの判断・発車前の安全確認約25台(25台で59.6%)
乗降がなければ通過する運用上に加えて、停留所ごとの通過・停車の判断約9台(9台で60.9%)

通過の判断を遠隔に残すだけで、受け持てる台数はおよそ3分の1になる。報告は、この判断を予約システムや停留所での乗客の意思表示に移せば、1人が受け持てる台数を大きく増やせる可能性があるとしている。ただし、9台・25台という値は2〜5台の条件で測った処理時間からの外挿であり、その台数で人の能力を直接確かめた結果ではない点に注意が要る。

遠隔操縦は1台に専念する仕事

遠隔の人が操舵や加減速まで行う遠隔操縦は、監視とは別種の負担になる。2026年10月の自動車技術会では、その品質を左右する要因についての報告が続いた。

遠隔操縦をしている間、その人は操作中の1台にかかりきりになる。遠隔操縦を体制に組み込むなら、監視の台数とは別に操縦の要員を見積もり、映像・通信・操作系を安全の要件として設計する必要がある。

まとめ:「何台見られるか」より先に「何を任せるか」を決める

遠隔型自動運転の1:N体制は、法令で台数が決まっているわけではなく、事業者の計画と審査で決まる。そして研究は、受け持てる台数が、遠隔の人に残す業務の重さで桁ごと変わることを示している。自社で具体化する際の論点は次のあたりになる。

運転の主体が人からシステムへ移る仕組みは、レベル3のUN-R157(ALKS)とLevel 3自動運転と比べると違いが分かりやすい。運行設計領域を外れたときに車両がとる最小リスク状態(MRC)への移行は、遠隔の人が対応する場面の起点になる。安全をどう確かめるかは、シナリオベース検証と検証の階層をあわせて参照してほしい。自社の運行に即した体制設計は個別性が高く、具体化の段階では外部の視点を入れると論点整理が速い。

出典