MRC(最小リスク状態)

英語: Minimal Risk Condition 正式名称: Minimal Risk Condition

MRC(Minimal Risk Condition:最小リスク状態)とは、自動運転システムが運転を継続できない状況において、車両を安全な状態(安定した停止状態など)へ移行させた結果として到達する、衝突リスクを抑えた状態のことである。

要点(Key Takeaways)

  • 自動運転システムが運転を継続できないときに、車両を安全な状態(安定した停止状態)へ移行させた結果の状態。SAE J3016が定める概念
  • MRCは到達すべき『状態』であり、そこへ至る操作・方策とは別概念。SAE J3016では当該動作を『DDTフォールバック』と呼び、『MRM(最小リスク方策)』は主にISO TR 4804等で用いられる用語
  • 発動の契機はODD逸脱、またはDDT(動的運転タスク)関連の系統故障。レベル4・5はフォールバック操作でMRCに到達できる(NIST SP 1900-301)
  • レベル3ではシステムが運転者に引継ぎを要請し、応じない場合にフォールバックでMRCへ移行する設計。MRC・MRMの逐語定義は規格本文(有償)に属し未照合

詳細解説

MRC(最小リスク状態)は、自動運転システムが運転を継続できなくなったときに、車両を安全な状態へ移行させた結果として到達する状態を指す。SAE自動運転レベル(SAE J3016)が定める概念で、典型的には安定した停止状態とされる。

ここで区別が重要になる。**MRCは到達すべき「状態」**であり、そこへ至る「操作・方策」は別の概念である。SAE J3016 はこの移行動作を「DDTフォールバック(DDT fallback)」と表現する。一方、industry や ISO TR 4804 などでは同様の動作を「MRM(Minimal Risk Maneuver:最小リスク方策)」と呼ぶことが多く、用語が標準によって異なる点に注意がいる。MRC・MRM の逐語的な規格定義は規格本文(有償)に属するため、本稿はその細部を断定しない。

発動の契機は、ODD(運行設計領域)からの逸脱、またはDDT(動的運転タスク)の性能に関わる系統故障である。NIST の公開資料(SP 1900-301)によれば、レベル4・5のADS搭載車は、ODD逸脱時または当該故障時に、フォールバック操作によってMRCに到達できる。レベル3では、まずシステムが運転者に引継ぎを要請し、運転者が応じない場合にフォールバックによってMRCへ移行する設計とされる——MRCの達成を「誰が」担うか(運転者かシステムか)がレベルを分ける要素になる。

SDVにおける位置づけ

MRCは、自動運転の安全論証における「最後の砦」にあたる概念である。あらゆる故障・逸脱を未然に防ぐことは現実には不可能であり、起きたときに車両を安全な状態へ確実に移行させられること——フォールバックの設計と、その到達点としてのMRC——が、自動運転を社会的に許容可能にする鍵になる。

SDVの文脈では、フォールバックの判断・制御もソフトウェアが担うため、その正しさには極めて高い保証が要求される。フォールバック系は混合臨界における最高水準の安全機能であり、低重要度の機能から隔離して確実に動作させる設計が前提になる。MRCは、SDVの「止める、を保証する」能力が問われる場面そのものである。

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出典・一次情報

  1. SAE J3016 "Taxonomy and Definitions for Terms Related to Driving Automation Systems for On-Road Motor Vehicles"(規格本体・有償) (MRC(最小リスク状態)およびDDTフォールバックの概念を定める原規格(本文は有償のため未照合・概念は公開要約/NISTで代替)) — SAE標準ページで存在確認・2026-06-10
  2. NIST Special Publication 1900-301 "Automated Driving System Safety" (「レベル4・5のADS搭載車は、ODD逸脱時またはDDT性能に関わる系統故障時に、フォールバック操作でMRCに到達できる」旨の記述) — NIST公式PDFで照合済・2026-06-10